タチョナとは?

「touch on art (タチョナ)」は学校授業の中でアートに触れて体感するプログラム。
大阪にゆかりのあるアーティストが、大阪市内の学校に出向き、学校授業の中で子どもたちと一緒に作品を作ります。
ジャンルは演劇、美術、ダンス、メディアアートなど多彩に展開。プログラム内容や開催日数もアーティスト、学校の要望に応じて様々。「アート」「学校」それぞれの現場を知る複数のコーディネーターがアーティストと学校間の調整役となり、プログラム内容をアーティスト、先生と共に組み立ててゆきます。

このプログラムを通じて、アーティストの表現やプレゼンテーションを機会を増やすとともに、アートの現場を支えるスタッフのアーティストの制作現場を体験し、コーディネートする能力を養うことで、大阪のアートシーンを支える次代の人材を育成していきます。

また、学校現場においては、芸術表現の固定観念を取り払い、まずは身近なものとして体験することで子どもたちの豊かな感性や表現力・創造力・コミュニケーション能力の育成を図ります。その結果として、アートの多様性に触れながら、自他の理解を深めることで、自己肯定感を向上させ、将来的な社会的自立を促します。

またこのプログラムは芸術創造活動支援事業実行委員会(中之島4117)のプロジェクトとして運営されています。

大阪市立南港渚小学校×トーチカ
2011/11/9(3-4時間目)

時間:12月7日10:45-12:25
学年:5,6年生
南港渚小学校で実施された
トーチカワークショップ
トーチカさんのプログラムは、一言でいうと、
”あそび”がとても含まれているプログラム。
その醍醐味は、その場で作る参加者オリジナルの
映像が生まれていくことに意味があります。
ITの分野では

Consumer Generated Media という言葉があります。
CGMとは、情報媒体(メディア)の中でも、
消費者(コンシューマー)が自ら情報を発信するメディアの総称です。
今回は消費者ではなく、参加者ですが、
ともに作り出し、新しく作るという意味で、
トーチカさんはメディアに徹しているという意味で
メディアを使ったアートとしての文脈的にも
面白い構造がありました。
さて、具体的な流れを説明します。
授業開始前の準備としては、
機材の搬入、設営、パソコン等電子機器の
電源確保などが重要です。
特に、パソコンのACケーブルやプロジェクターの
ディスプレイケーブルなどは
もし忘れてしまうと大変なことになります。
その後、大学のインターンスタッフも来て、
カメラ位置などの確認を行い、スタンバイができました。
その頃、子どもたちもやってきて、
1クラスずつ、2学年が隣に座っていきます。
トーチカさんの簡単な紹介からスタートして、
まずは、プロジェクターで過去の作品を見せます。
子どもたちも、暗闇に光るその映像にとても
魅せられていきます。
次に、実際に映像を撮ってみようということで、
定点カメラにうつった自分たちが手を振ります。
位置はこのあたりが良いかな? 自分は映っているかな?
子どもたちの主体性が生まれてくる最初の瞬間です。
するとすぐに、体育館の照明が消されます。
子どもたちの意識は、自分たちが映った明るいプロジェクターと
各々が持つペンライトに意識が集中。
トーチカさんの指導のもと、
自分の手元で丸を描くと、
自然に歓声が沸き起こります。
その後、花を書いたり、
顔を書いたり、
子どもたちが1つ1つの動作ができていくように
なっていきます。
撮影、鑑賞。次のアクション。
そのスピードがとてもスムーズなことも
このワークショップがとても面白くなっている理由の1つでしょう。
その後も、アニメーション映像を撮ってみたり、
自分たちの学校オリジナルの映像を作ってみたりと
約2コマの授業時間が本当に楽しく終了しました。

 

まとめてみると、
このワークショップの特徴として、
子どもたちの意欲・関心が集中されやすい場を
とてもうまく使っていると思います。
体育館で実施するため、照明のON・OFFができる。
だから、ずっと暗くはならない。
ずっと明るくもならない。
自分たちが見たい、作りたい映像が
目の前にあり、集中して物事に取り組める環境があります。
そして、難しくないこと。間違っても良いこと。
それが許されるような雰囲気で、
トーチカさんの声かけ、ファシリテートも行われていました。
これらがアートワークショップの場づくりに
重要な要素となっていると思います。

大阪市立明治小学校×トーチカ
2011/12/7 (3〜4時間目)

時間:12月7日10:45-12:25
学年:5年生2クラス

9月から始まったタチョナもこれで今年の授業は最終回。
9月には窓を開けていた体育館はすっかり寒くなり、我々スタッフは厚着をして授業に臨みます。
10時45分からの授業に間に合うように、トーチカさんはじめスタッフは10時前には体育館に入り、カメラ、プロジェクターやパソコンの設定、こども達に配るペンライトの準備、遮光空間の作成など、スタッフがテキパキと着々とセッティングを進めていきます。
特にデジタルメディアの作品なのでコンピュータ関係の設定は重要なポイント。
その間、先生と段取りについて簡単な打合せを行います。

〜デモンストレーション〜
さて、先生がすでにこども達に「すごいアーティストがやってくる!」と話してくれていたおかげで、こどもたちは「何やるんだろう?」という期待感を持った表情をして体育館に入ってきます。
担 任の先生から「世界的アーティストのトーチカさん!」との紹介で、簡単な挨拶のあと早速デモンストレーション映像を見ます。音楽もついた楽しいプロモー ション映像で、こどもたちは何をするのかをなんとなく理解します。ここではまだ、光を使って、字を書いたり絵を書いたりということは分かるけれど、「どう やってやるの?」という感じですね。

トーチカさんから簡単な説明のあと、早速やってみようということで、ペンライトの受け渡し。
映像にあったペンライトを実際に受け取り、ようやくこれを使ってやるのかという感じでペンライトをさっそく振り回してみせます。
そして、プロジェクターには前面に置いたカメラで写している映像がそのまま写ります。したがって自分が持っているペンライトの明かりがそのままプロジェクションされて見えるから、自分がカメラのどの位置にいて、どのくらい動くとどうなるのかをなんとなく理解します。

〜ワークショップ1〜
全員にペンライトが行き渡って、ようやくワークショップ開始。
まずは顔ぐらいの丸を書くことから始めて、それがプロジェクションですぐに出てきた時に「うわーっ」と歓声が上がります。
次 にいろいろな絵を書いて試してみます。自分が書いたものを観るだけでなく、他のこどもたちが書いたものも一度に見れるので、あちこちで「上手くいった!」 とか、「へんな形になった!」とか、笑い声が聞こえてきます。その都度、トーチカさんがしっかり見て適切に指導します。

そして、トーチカさんの「こんなん書いてみて」という指導の元、言われるまま書いていくと、どんどん絵がつながり、モーションピクチャーになってプロジェクションされると再び歓声が起こります。
自分の目の前で跳ねるボールを作ったり、タネから育つ植物が花を作るというストーリーにも挑戦していきます。

簡単そしてスピーディー
このワークショップが最も優れている点の1つがここ。自分が表現したときの熱さが残っている時間で見直せるというのは、直接的な感動をもたらすと共に、反省もすぐに出来てすぐに修正も効くということ。このテンポ感はまるでスポーツ感覚と言えるかもしれません。

〜ワークショップ2〜
さて、ここからは小学校オリジナルの作品を作っていきます。
この学校では全員で校章と大阪市立明治小学校という文字を作っていきます。
文字の部分、校章の部分それぞれのパーツを光で表現する様は友達同士の協力がないと絶対にできない作品です。
個々の責任は重大であるけれど失敗がない。その中でトーチカさんの指導で何度もうまくいくように挑戦し徐々にきれいな作品が出来上がっていきます。

間違いという考え方
このワークショップで気がついたことはもうひとつ。
上手くきれいに書けるのも良いけれど、失敗が確実に笑いに転化されることで失敗でなくなるところ。つまり、これもいいじゃないかとこどもたちが簡単に理解できるような表現であるところ。
その結果、何度も同じ表現を繰り返しても、まったくこどもたちが飽きることなく真剣に取り組む姿がこのワークショップの魅力の1つとして現れていると感じます。
何より先生がわざと間違えてこども達に笑いながら指摘されている風景は非常に和やかな風景であるけれど、その作品はメディアの最先端をいく作品だと考えると、「人間のファジーな部分の受け止め方」を考えさせられます。

その後、途中機材トラブルなどもありましたが、何枚も撮影していくうちに時間があっという間に過ぎて終了。
終了後、ミーティングの中で「こども達の躍動感がとても良かった。」「作品ができた時の歓びがある。」
という他に「安全な教材を使っている」という感想が先生や見学者からありました。

 

大阪市立桃陽小学校×北村成美 (3日目:最終回)
2011/10/26(4-5時間目)

2階にある体育館のギャラリーの窓からは、秋晴れの空が見えます。
チャイムの音が鳴った時には、既に8列に並び、しげやんと6年生のみんなとの「呼吸」が始まっていました。
足を上げたり、体をゆすったり。
もじもじあるきにうしろあるき
前に歩いたり、横に歩いたり・・・。
一段落ついた後、前に手をついて、手をばたばた。うあ~っとアップしていって。
既に、一体感が感じられます。
ジャンプ。立って、背中から転んでのびて、転んで、深呼吸。
即興で繰り広げられる呼応の動きの後、「日直さんどうぞ」の言葉で挨拶をします。
北村さん:「えっと、今日、5時間目、いよいよ5年生に見せます。2階からみてもらう。どこにいる人もみえる。向こうを正面にして、もう一回並び直します。どうぞ!」
最初の形で、ストップです。「ポーズやから動いている人おらんはずやで」と北村さん。
アシスタントの下村さん・鈴木さんが上から見守っています。
何度か場所の確認をして、その後、いよいよ通し練習です。
「よっしゃ、おまたせ。いくで!」
その後、初めて、一曲を流して踊りました。
前回、子どもたちが考えた動きに、止まる所、動く所などの構成が加わり、更に作品としておもしろさが増しています。
アフリカっぽいダンス、寝たり転がったりしているグループ、人を縄跳びの縄のように揺らして、その周りを飛んでいるダンス、ウェーブをする人の周りを手を叩いて回っている動き・・・
輪になって、音を出して・・・まるで、秘境で行われているお祭りを見ているかのような感覚を覚えました。神にささげるリズムのような、踊りの周りでメラメラと炎が燃えているような、そんな雰囲気です。
しげやんがオーケストラの指揮者となり、演奏の指示を出します。最初は全員の動き、次に、全員の動きを止めます。そして、一グループずつ、演奏を再開させていきます。
動いているグループと止まっているグループ。
そして今度は、指揮者がストップさせていきます。
全員の身体が止まって、今度は、深呼吸
そして、ステージとひな壇に一斉に並びます。そして、また深呼吸。合図で一斉に元の場所に戻り、また全員で踊り狂います。その後、合図でその場に倒れ、ぴくりとも動かない。そして、しげやんがごろっと転がったら全員転がりながら前方に集まり、最初の場所に整列。そこで終了です。
しげやんからは、色んな言葉がかけられます。
「止まってから、動いているの、全部見えてる。」
「視線の動き。止まるってどういうこと?」
「本番ちがうことするかもしれん。でも、いつも一緒に動いているやろ。」
「寝てるとき、動いてるのかっこわるい。全部見えてるで。」
自分の動きがどのように見えているか、伝わっているかを聞き、自分の体と向き合います。
「5年生びっくりさしたいねん。うわってなるやろ。5年生うわってなるのみたら、めっちゃ気持ちいいし。」
発表に向けて、気持ちを引き締めて、4時間目は終了です。
***午後***
いよいよ本番前。まず、1回通してリハーサル。6年生のみんなからは、緊張感、集中、やる気が伝わってきます。
「私らプロ。そのために何がいるか。うてばひびく。同時に!!さいご。最初のときよりにぶってる。気合い十分あわてなくていいから。」
「おもてるだけでは表現にならへん。あらわさな。俺はこんだけやるんや~ってプロの世界、そういう世界で生きてるねん。」
「みんな気持ちあんねん。でも、体がそこにいってない。いけるかいかないじゃない。いくかいかんかやで。
もう1回通して練習しよか。」
最後の最後まで、しげやんから子どもたちへの本気のメッセージが発せられます。中途半端に「よくできた。」「がんばった。」とほめるのではなく、とことん「プロ」「うてばひびく」「体」を追求していくしげやんとそれに応えようとする子どもたち。
さあ、いよいよ本番です。
14:00整列完了。
「5年生の皆さんどうぞ。」の言葉で、5年生が入ってきます。
本番を、5年生は体育館2階のギャラリーから観ます。
6年生が醸し出す雰囲気に、5年生も緊張感を持って体育館を見守ります。
しげやんの合図で一斉に体育館に広がり、音楽と共に動きが始まります。
桃陽小学校の体育館。秋の昼下がりに、この世界の誰も見たことのない、世界で一つのダンスが繰り広げられていきます。グループごとに異なる動きをしているにもかかわらず、不思議な一体感が体育館を包みます。どこを切り取ってもおもしろく、ダンスを踊っているというよりは、ダンスが生みだされているというような光景。ギャラリーには、息をのんで見つめる5年生の姿がありました。5年生は、じっと、おしゃべりもせず、動くこともなく、階下で繰り広げられる踊りを見つめていました。
およそ6分間のダンスですが、踊る側も、見る側も異世界を冒険したような不思議な感覚でした。
言葉にならない衝撃を感じながら5年生はギャラリーを後にし、6年生の待つ体育館へ移動します。
司会のしげやんが、5年生に感想を聞きます。
「ぱってやったらとまって、またぱってやったら動いてすごかった。」
「おもしろいこともあればすごいところもあった。(肩車のところ)」
「先生が指示をしたらとまったり、てきぱきしてきれいだった。」
「はげしいところとかあってすごかった。」
 という嬉しい感想が飛び出します。
次に、「6年生、やってみてどうでしたか?」との質問。
しばらく、6年生からは言葉が出ませんでしたが、
「5年生にすごいと言われてうれしい。」
「上から見られて、自分がどんなおどりしている不安だったけど、よかったといわれてうれしい。」という感想が出ました。
「やりきったって言う人?」という質問には、みんなが反応します。
最後に、先生からの感想。
「めっちゃ止まると所、動く所、美しくない?今日のダンスは先生におしえてもらった?ちがうんです。いろいろな動きをする中で、みんなが考えて動いた動きなんです。6年生自身が考えて動いた動き。すごいと思わへん?
先生に決めてもらったのは、指揮者。自分がどうみえてるかわからないくらい。うごいている。
拍手・呼吸を忘れるくらい。涙出そうになりました。」
その後、5・6年生いっしょに、しげやんの動きのまねをします。もう、6年生としげやんは、息がぴったり。しっかりとしげやんを見つめ、一緒に動きます。「うてばひびく」が、体にしみこんでいる感じ。表情は、本番を終え、すっかり「プロ」の顔でした。5年生は、困惑気味。まねするのかな?でも、何の指示もないけど、どうすればいいのかな…と、きょろきょろしています。しげやんとの初めての授業の時の6年生のよう。
最後、6年生に向けて、しげやんから一言。
「プロっていうのは、うてばひびく。」
「みんながほんとに見て、ほんとうに見せてくれた。表現。ほんとにあらわれるまでやったので、5年生が、よかったといってくれた。結果出たやろ。この経験は、一生使えます。」
しげやんの、心からの言葉と、5年生からの嬉しい感想、そして何より自分達でやりきった達成感で、子どもたちは晴れやかでした。
最後に、挨拶をした後、ハイタッチでお別れです。さわやかな、晴れやかな締めくくりでした。
***ミーティング***
終わってから、最後の先生とのミーティング
しげやん「久しぶりにいいものみせてもらいました。
5年生の先生によると、「(5年生の子どもたちは)見ながら緊張していたとのこと。待っている間、“静かに見るように”という声かけをしていたが、踊っているときには、そうした注意をする必要も、雰囲気もなかった。」というコメントがあったそうです。それほど、6年生の踊りに引き込まれていたのですね。
6年生の先生からは、次のような感想が聞かれました。
「いつもは、あまり感想を言わない子が、“今日、成功してよかったです。”と言った。」
どんどんだれる感じなかった。すごい集中力と緊張だった。
最初の1時間目は、どんなことが始まるんやろ~どんなものができあがるんやろ~と思った。
子どもたちは、いいもの見せたいという気持ちがあった。表現するのが苦手な子どももいるが、工夫して、作って、こんなふうによくしようと、集中してできてよかった。
しげやんのような指導ができたらいいね、と話していました
止まる、動く、息を合わせるといったことは、今後の学習発表卒業式にいかせる。
今回の指導を思い出してやっていきたい。」
しゃべることで表現できない子がすごくいい顔になってた。こんな顔で私のこと見ないのにな。しゃべるばっかりという表現でなく、何もいわずに感じ合えるそういう指導をしたい。指導するのに、どうしてもしゃべらせようとする。何もないところから創作するということを学ばせてもらった。あの子たちの気持ちでできあがっていく。そういう作品づくりの仕方をしたい。当日、時間がない中で、いい感じになってた!ふだん教師側があせって、おしりたたきつつ(時間があるのにさせてしまう)やらせてしまう…」
しげやんからは、最後の5・6年生が集まったときの6年生の表情について、
一人一人の顔がどこにすわっててもよく見えた。
一人ひとりの顔がはっきりしていた」といいます。
今回、5年生に見せると聞いたとき、6年生は、自信なげな反応が返ってきたといいます。しかし、その時の表情とは、全く違う顔…一人ひとりが自信に満ちた顔になったのです。
あんないいWSないくらい、いい経験させてもらった。予想以上によかった。」としげやん。
先生によれば、放課後練習したいと申し出て、練習をした女の子のグループもあったとのこと。特に、前回は男の子が目立っていましたが、今回は、女の子もすばらしい成長をとげていました。
アシスタントのダンサーからは、「上からみてるとき、つい、自分が6年のときにこうやってたら、どうなってたかなと思った。何となく受け身になってしまう体そういうのを前にして、勉強以外のことで見せられるものがあるんだ。自分たちでうごきて、考える機会になったのでは。」
ダンサーとして同じフィールドに立っているという感じがした。」という感想が聞かれました。
しげやん自身は、「指導をする」「芸術の裾野を広げる」という意識はあまり無いといいます。
「学校という決められた枠がある場所で、学校のきまりを破らずに、最大限おもしろい作品を創ること、そして、子どもたちをプロのダンサーとして、対等な関係で向き合うこと。そして、どんなおもしろい作品を創れるか。世界中の人が見て、おもしろいダンスでないといけない。それを、小学校という限られた中でする。」
しげやん自身がプロのダンサーとして子どもと作品を創る上での哲学に触れながら、3回のワークショップで子ども・先生・ダンサー・スタッフそれぞれと関係を深められたことを喜び、桃陽小学校でのプログラムは幕を閉じました。

大阪市立苅田北小学校×三原美奈子 (3日目:最終日)
2011/10/25(5,6時間目)

いよいよ実施三日目。

期待をふくらませて教室に行ってみると・・・

既に完成かと思われるようなイグルーが出来上がっていました。

1組さんの星形の家。

前回、先生から、「子どもたちが、上に屋根をつけて、てっぺんに星をつけたいと言っているが、どうしたらよいだろう。」という相談がありました。

それに対して、三原さんから、「屋根を箱で作るのは、重みで落ちてくることもあるし、難しい。柱を立てて、そこに向かって骨組みを作ったり、ビニールを使って屋根風のものを作ったりしてはどうか」という話がされました。

そして、その話どおりに、立派に屋根ができあがった「星形の家」が!!

ビニールテープののれんもついています。
昼休みの時間だったということもあり、給食を終えた子どもたちが、どんどん最終仕上げの作業にやってきていました。大人の目には完成形でも、子どもたちは、まだまだやることがある様子。
大人に「やらされている」のではなく、「自分たちが心から楽しんでやっている」と感じられる、主体的・意欲的な姿がそこにはありました。
***授業開始***
授業が始まって、三原さんからは、「あと1時間で、どんなことができるかな?」という問いかけが。
無地の箱を指差して、「何も書いてない箱には、自分たちで、パッケージを描いてみよう」と呼びかけます。
また、「ティッシュの箱の穴の開いている部分に、クイズを入れるなど、遊べるしかけを考えてみるのも、楽しいね」という提案。
他にも、「学校」や「大きな顔」というテーマにあった建物にするには、どんな工夫ができそうか、という問いかけも。
ラスト1時間、まだまだ作業は続きます。
白い箱にはお絵かき!オリジナルのパッケージになりました。
お城の学校には、時計が設置されました。本当の学校みたいだね!
とにかく、入りたくて、しょうがない!少し入るのには狭いけど、この入り口は、大人気です。
たくさん積み重ねて、背丈より高いイグルーになりました。でも、まだまだ積み上げたい!!という様子。
大きなかおの家。目の部分は、窓にしています。まつげや歯も加えて、ぐっと顔らしくなりました。
口の部分から入れます。

あっという間に時間は流れます。子どもたちの様子を見ていると、ひたすら「作る」時間から、今度は、「遊ぶ」時間へと移行していることがわかります。

「トンネルハウス」では、トンネルをくぐって遊ぶ子がいっぱい。前回、苦心して作った窓も、いい感じです!

「おしろの学校」では、学校の教室を見立てて、椅子やえんぴつ、ふでばこ、時計などをせっせと作っています。入り口が二箇所あり、狭い低学年用の入り口と、高さも高く、幅も広い高学年用の入り口の二箇所があります。う~ん、よく考えられています。

「おおきなかおの家」は、まつげや歯も加えられ、ぐっと顔らしくなりました。元の原画が、「うさぎ」をモデルにしたものであったということで、上の部分がうさぎの耳になっています。

「星形の家」は、屋根もついて、防寒もばっちり!?せっせとビニールテープでのれんを作り、入るための暗号も決まりました。

さて、いよいよ、お家の方への発表です。

*** 6時間目 発表会 ***

発表会には、たくさんのお家の方がかけつけてくださいました。(先生方によると、子どもたちが、家でたくさん宣伝をした効果があったとのこと。)

まず、三原さんから、お家の方、そして子どもたちに対して、「パッケージ」のおもしろさについてのお話がありました。三原さんは、この日のために、「パッケージイグルー堪能ガイド」を作成してくださいました。

・パッケージを集めるところから、このワークショップはスタートしているということ。
・箱の表裏を考えたり、大きさや強度に注意してくみ上げたり、箱の色と中身について考えたり、箱のフタをとめるときに、色んな開け方をする箱があることを知ったりできるということ。
・できあがってから、そのイグルーとともに、箱をじっくり見ることで、発見があること。

などなど・・・興味深い話がいっぱい!子どもたちも、真剣に耳を傾けていました。

「中身を取り出したら、すぐに捨ててしまいがちな箱。それを集めることで、消費の傾向が分かったり、その時期の生活ぶりが見えてくる」という三原さんのお話に、納得です。

そういえば、箱を集めた時期が夏だったこともあり、アイスの箱が、たくさん集まったのでした。

三原さんの話を聞いたあと、それぞれのイグルーのチームの代表が、自分達のイグルーのアピールを読み上げます。苦労したところ、見てほしいところなどを、元気に発表しました。

そして、三原さんから、一チームごとにコメントをもらいます。

発表のあとは、みんなでイグルーで、遊ぶ!!

この日は、小学校にまだ入っていない弟、妹たちもたくさん来ていて、お兄さん・お姉さんも作ったイグルーに招待され、とても楽しそうに遊んでいました。

大人気のトンネルハウス。出たり入ったりが楽しいね!
骨組みが、実にしっかりした星形の家。
先生たちも、子どもたちの思いを形にしようと一緒にがんばってくださったそうです。

お母さんたちがたくさん参観に来られていましたが、箱を外から眺めながら、「うちから持っていった箱がある」「見てるのもおもしろいな~」など、お話をされていました。

本当に、色んな箱があって、眺めているだけでも飽きないパッケージイグルー。表からはもちろん、イグルーの中にはいって、中から眺めて、商品の説明や原料などを眺めるのも、また、楽しいのです。

遊ぶ時間は、あっという間にすぎて、いよいよ三原さんと子どもたちのお別れの時間。

身の回りにありふれた「箱」のおもしろさを、存分に味わわせてくださった三原さんのワークショップ。そして、自分達で作り上げたパッケージイグルー。

満足そうな子どもたちの表情で、授業は終わりを迎えました。

*** 先生方とのふりかえり ***

先生方とのふりかえりでは、次のような感想が聞かれました。

・大人が見てても、おもしろい。生活が見える。
・作業の中で、自然と役割が分かれた。テープを切る子には、テープ係としての誇りが感じられた。どんどん作業を洗練させていって、まるで職人のようだった。
・前日も、休み時間ごとに作業に行って、汗だくで戻ってきていた。相当な思い入れがある。
・他のチームのイグルーを回らずに、ずっと、自分のところのイグルーの「番」
をしていた子もいる。
・保護者の方が、驚いておられた。もっと小さいものを想像していたようだ。ここまで、できると思っていなかった。
・保護者の方にとってみたら、「自分の家にあったものが、こういう形になる」・・・自分も参加しているような気分になれるのではないか。

今回のパッケージイグルーを作るためには、まず、箱を集める必要がありました。お家の方の協力があって、出来上がったものを、最後に見てもらえて、そして楽しんでもらえたことも、素晴らしかったと思います。

また、ワークショップが3回という回数にも関わらず、ここまで立派なイグルーが出来上がったのは、三原さん、そして子どもたちの力ももちろんのこと、先生の協力のおかげでもあります。

家庭、先生、子どもたち、そしてアーティストが連携して創り上げたパッケージイグルー。

本当に奥深いおもしろさにあふれていました。

三原さんは、小学校での授業は今回が初めてだったということで、パッケージイグルーワークショップの実現にとても喜んでおられました。

是非、これからも、大人にも子どもにもたくさんの発見と学びと楽しみがある、パッケージイグルーワークショップを、たくさんの方に体験してもらいたいと思います。

達成感と心地よい疲労感を感じながら、苅田北小学校でのワークショップは幕を閉じました。