大阪市立東都島小学校×北村成美 (発表日)
2011/10/2 運動会

発表日。曇り空の心地いい気候の中、いよいよ本番となる運動会が開催されました。コーディネーターの私たちだけでなく、先生方も緊張な面持ちです。低学年のかわいらしいポップなダンス、玉入れが終わり、5年生はソーラン節、6年生は組み立て体そうが次に控えています。全学年のプログラムがある中でも、今回の3.4年生のダンスは、少し特殊で今までにない自分たちのダンスとなります。

静かに入場し、アナウンスが入って、じっとする。みんなの緊張が伝わり、会場も息をのむ。「黄色のリボン、結ぶとかっこいい。」「かわいい。」と会場からヒソヒソ話し声が聞こえます。スタートの音量が小さかったせいか、「sing!sign!sign!」が流れてはじめて、ばらばらと踊ってしまったけど、それでも気をとりなおして真剣な顔。
こどもたちの足の指先から頭の先まで緊張感が通って、一人一人が個となって、それぞれに身体から存在を放ち、さっきまで広かった運動場が狭くみえます。
はじめの見せ所の「エグザエル(通称)」では、会場から拍手があがり、「今年の3.4年、なんかかっこいいな」「自分たちとはちょっと違う、いいなー」「なんかおしゃれ」と、ぐっとみんなのダンスに引き込まれます。「家ではもうちょっとうまくいってたのにー(笑)」「おお、おお」と保護者の笑い声や驚きも。保護者の方たちは、しげやんが学校に来てることは聞いていたけど、具体的にどんなことをしているか、こどもたちから聞かされていなかったので(本当にしげやんとの「約束」を守ってたため)、驚きを隠せません。

たくさん練習したダンスもあっというまに終盤にかかり、エンディングです。しげやんから出た宿題も3年生がしっかりリードして、「ありがとうござました!」と今までにない大きな声を出します。音楽の影響もあるのか、こどもたちは、ダンスを終えた達成感、緊張から開放された気持ちが顔に表れて、心から溢れ出た「ありがとうござました!」が運動場に響きます。その自信ありげな、ほころぶ顔はまるで本当のダンサーのよう。会場みんなで、拍手で盛り上げながら、最後のグループまでみんな大きな声で会場への感謝の気持ちを届けることができました。

これまではしげやんと一緒にたくさん練習して、みんなで揃えたり、それぞれで踊ったりしてきたけれど、こうして運動場で発表することで、会場からの反応を敏感に感じることができました。そして、そのお返しをするかのように大きな声と満面の笑みで感謝の気持ちを表現する。そうやって、こどもたちは、踊ることだけが「ダンス」となるのではなく、会場のレスフォンスを感じることで、初めて大きな意味での「みる」「みられる」を肌で経験できたと思います。
それはアーティストしげやんの「ダンス」の根源的な考え方である「相手の目をしっかりみること」を、こどもたちは「ダンス」を通して経験し、理解を深めることが出来たのではないでしょうか。また、「見てないと思ってるやろうけど、ちゃんと見てるでー!」としげやんの何度も出た「見る」という言葉は、ダンスの場面だけでなく、こどもたちの日常生活の中でふとしたときに行動にもつながることだと思いました。

 

※当日、しげやんは公演のためにこどもたちの発表をみることができなかったのですが、後日、しげやんのために特別にこどもたちの発表が行われたそうです。

 

 

大阪市立東都島小学校×北村成美 (4日目:最終回)
2011/9/29 (5~6時間目)

最後のしげやんとの練習の日。運動場で集合します。お昼休みは体操服であそんでいる子もいれば、北村さんに話しかけてダンスの練習をする子もいます。
チャイムがなって、北村さんたちが三角座りをしてじっとしています。先生の声かけでようやく整列するこどもたち。4分の遅れです。

始めに約束ごととしていくつか確認。手の組み方、目を話さないことなどをこどもたちに伝えます。でも、運動場というのもあって返事が小さい…。「返事というものは相手に伝わるようにするの!」と北村さんが言います。「身体さわってみー!」とみんな自分の身体をべたべたさわってみて、「この身体全部が今、人から見られてると思ってください!」と伝え、運動場全体が、ステージのように緊張感が生まれたところで、早速これまで先生たちといっしょに練習してきたダンスを通してみることに。

以前の課題、移動の際のまごまごしたのがなくなり、一人一人がしっかり地面に足を踏み込んで、手をしっかり組んでダンスしています。みているこっちも息をのむ緊張感。途中、エンディングのところで大きく手を打ったり、曲を聴きながらこどもたちの動きやすいようなタイミングをつくったりと、先生のアイデアも盛り込まれていました。「プロみたい!めっちゃかっこよかった!」と北村さんもびっくりしています。

「今のきもちを忘れずに」ここからもっと格好よくしていこうと、パートごとに何度も練習していきます。太陽の日差しが強い中、こどもたちは繰り返し練習し、それでも弱音を吐きません。身体が疲れてしまった子は途中、休憩しながら、じっとダンスのようすを見ています。「見てても上手に踊れるわけじゃないからね」と、こども扱いは一切しない北村さんに、こどもたちはぐっと集中しています。

5時限目が終わって、休憩時間には集中がとけてくたくたな様子もありましたが、6限目はさらに加速していきます。全体の踊りもひとつひとつ、かっこわるい例、かっこいい例を北村さんがやってみせて、何がかっこよくしているかをこどもたちに何度も問いかけます。

最後に、エンディングのところでお客さんに感謝の気持ちを形にしてください。とお題がでます。4年生の中には準備して、北村さんもびっくりするダンスがあったりしました。それをみた3年生も、負けずに組み立て体そうを真似たものや、自分たちで考えた「かっこいい、見た事のない」アイデアを出し合います。

しかしながら、いざ実演してみると、エンディング曲は時間に限りがあるので、もたもたしてると後のグループが間に合わなくなります。「むずかしいことをしようとせずに、簡単なことをきっちりしてもかっこいいんよ」とみんなにアドバイスをして練習が終わりました。

これで北村さんの授業は終わり。完成は運動会本番で発表されます。

大阪市立東都島小学校×北村成美 (3日目)
2011/9/26 (3~4時間目)

台風が過ぎ去って、晴天。準備を備えて北村さんが体育館で準備体操していると、先生たちがやってきてこれまでのこどもたちの様子を事前に報告。どこまでできて、どこまでできてないか。この本番直前の確認が、これから実施する内容に効いてきます。今日は3年生と4年生が合同で90分かけて練習します。

授業のチャイムが鳴る前に、こどもたちがまだかまだかとドアをどんどん叩く。ドアを開けてもいいですよ。との合図で、こどもたちは入ってきていつもの整列になる。どこかそわそわしてる空気。先生のいつものご挨拶をしたあと、今日はしげやんとアシスタントのジュリさん、タナカさんの3人でご挨拶をする。ジュリさんが一瞬挨拶の声が小さくて、「声がちいさい!」としげやんに注意の声が響く。ジュリさんも改めて大きな声で挨拶。

挨拶をした後すぐに無言の対話が始まる。こどもたちも待ってましたとばかりにそれに応えます。早速身体ならしに、前回行ったゾンビ、かぶき、くるりと回って、と以前先生が必死に覚え、練習してきた振り付けをみんなで繰り返し、身体を動かします。小さく整列してたら前後左右が邪魔になっているようで、「邪魔にならないような場所に動きなさい。」とあくまでも「このラインまで広がりなさい。」と行動を言葉にしません。
「sing!sing!sing!」に合わせて、繰り返し全体のダンスを踊った後、マイクを持って振り付けに意味を伝えます。「シャツを脱いで(脱ぐように)、パンツを脱いで(脱ぐように)、肩に蚊が止まったから、くるっと回って追い払う…」言葉で意味をつけることで、より振り付けに気持ちがはいっていきます。

次に、手招きをして2学年のこどもたちが北村さんを囲むように集まります。声はマイクを通して小さくしゃべります。「みんなの顔がみえるように」と合図をして、こどもたちは体育館にだまって大きな円になって座ります。 「顔見えてるー?」と北村さんも声を出して緊張を盛り上げます。この円の中で、各クラスそれぞれで練習して来た事を発表することになりました。座ってる人はしっかり踊ってる人のことを見ること。しゃべる必要も打ち合わせも必要もないです。「しっかり踊りを見ることで、緊張して踊る人も踊りがきれいになるから」こどもたちは今まで練習して来たことを実践するのに、恥ずかしいのかもたもたしています。3年生から発表していき、各クラスごとにどう見えたかこどもたちが感想を言い合います。「円の端っこの方で固まってた」「ちゃんと相手の目をみてない」といろいろクレームばかり。「おかしいことに気づいた人はその気づいたことを治すように!」と北村さんが言うと、4年生たちは自分たちが言った手前しっかりせねばと、緊張がさらに増します。
その緊張感は、見学者の私からも身体で感じるほどで、遠くの方で他のクラスの子が「がんばれ!」と応援している程でした。また、踊った後、拍手を送る子もいました。
3年生から始まり、4年生で終わり、一安心したところで、「もう一回!3年生、さっきよりもがんばってみよう!」と北村さんの声があがる。こどもたちも「とことんやるぜ!」な勢い。中には体力がくたばって端っこで休憩する子もちらほらしています。
2周目のダンスが終えてまだ固まってみえることに激が走ります。「できる、できへんかは関係ない、やるかやらんかが大事!」こどもたちも「はい!」と勢いのある返事。

ここで前半終了で、10分間の休憩時間に。チャイムがなるまで自由です。こどもたちは一気に緊張感から開放され、声を出す子もいれば走り回る子も、のんびり過ごす子もいます。それでも、さっきのダンスになっとくいかない子らは、中央でグループになって練習しています。

あっというまに休憩が終わって 、緊張はキープされたまま次の振り付けへ。全体の踊りの確認をした後、今度は全員で一列になるように並びます。アイドルグループEXILEのダンスみたいに顔から下をぐるぐる回す踊りをします。一列になることに時間がかかってしまい、北村さんも「そんなんじゃ間に合わないよ!」と声があがります。こどもたちも、頭ではわかってるけど、なかなか思い通りに身体や全体で瞬時に動けずヤキモキしてるようす。

それでも、大きな一列のEXILEダンスは、大きな龍みたいにざわざわと波打つように動いてかっこ良くなり、「めっちゃかっこいいやん!」と褒めます。次は、各クラスごとに分かれて、さっきの全体の踊りのタイミングをずらすことで、4つのブロックに見せます。ここは身体も踊りを覚えていて、こどもたちはなんなくクリア。逆に先生が「覚えてないやん!」とこどもたちに突っ込まれてました。(笑)

さて次はペアになって手を組みます。全体で動くよりも、ペアの動きが断然やりやすそうでいきいきしてます。ある音楽のタイミングで「ピタっと止まる!」静止の時間をつくります。ここは遠くで車の音しか聞こえないぐらいの、静の時間。そしてラストは全員で最後の盛り上がり!全体の踊りをもう一回踊って、エンディングへ向かいます。

体力も集中もふわふわしてきたところで「後で練習したらいいと思ってるけど、今できないと、やったことない動きは後で練習してもできないよ」と最後の追い上げ。

ここまでで、もうこどもたちも北村さんもテンションはあがりきってて、見ている側も気持ちがいっぱいになってきます。それでも、最後までがんばって踊ったこどもたちは本当にナイスファイトでした。
ーーー
実施終了後、給食を終えて来られた先生たちと次回に向けての打ち合わせ。やはり全体の移動にメリハリが足りないので、特に練習してもらうように伝え、他にも細かな動きを確認しながら、次回で最終回になります。今回見学していて、一見「伝わっているのかなあ」「ちゃんと踊ってるのかなあ」と思わせる姿に見えるのですが、でも、よくよく見ていると顔が真剣だったり、工夫していたりして、こどもたちが自発的に踊ろうとしていることが実感できました。こどもたち一人一人の中でいろんな答えや工夫のダンスが形になりつつあるような。小さな芽を私たちは少しずつ育っていることを信じて見つめているような気がします。本番まであと6日間。

大阪市立東都島小学校×北村成美(台風のため延期。打ち合わせのみ)
2011/9/21

衣装や音楽を事前にこどもたちに先生が相談していたにも関わらず、突然の台風によって休校。本番まで後少しなのに!とこどもたちも、先生らも焦る中、次回実施に向けて先生たちと会議を行いました。

まず早速、音楽に合わせて、ダンス全体の構成を言葉で先生たちに伝えます。これまでやってきたペアで手を組んだり、じゃんけん、鏡、4人組になったり、8 人組みになったりをそのまま活かしつつ、身体ならしに踊った、ゾンビやどうぶつのような動き、かぶきを3年4年合同での踊りとします。他にも、大きな一列 になってみたり、3年生の見せ場、4年生の見せ場もある予定です。

そして曲はいろいろ考えた結果「sing!sing!sing!」というジャズのスタンダード・ナンバーの音楽になりました。映画でも使われる、どこかで聞いたことのある、でも身体が動いちゃうようなかっこいいテンポ。またエンディング曲は北村さんがご自身の公演でも使う特別な曲で最後にこどもたちがコールをしながら退場していきます。

曲を流しながら、北村さんが目の前で踊ってみせることで、先生たちの中でもイメージが広がり一気に気分が加速していきました。「時間がもったいない!私た ちでダンスを覚えるので、踊ってみせてください。」ということで、急遽先生たちのためのダンスレッスンに。先生はスマートフォンのビデオ機能を片手に、北 村さんのダンスを記録しつつ。他の先生方はしっかり目をみて真似をします。ノートにたくさんのメモをして、今日の打ち合わせは終了しました。

運動会での公演名は「もえろ!ひがみやダンサーズ」に決定し、衣装はこの音楽に合わせて、手の周りが邪魔にならないものをこどもたちが考えることに。どん な衣装になるか当日が楽しみです。残念ながら北村さんは運動会本番は出席できないので、ここから先はこどもたちの腕の見せ所になりそうです。

大阪市立東都島小学校×北村成美 (2日目)
2011/9/15 (5~6時間目)

今回は学年ごとに1時間ずつ、北村さんと時間を過ごしていきます。私たち見学者も北村さん、アシスタントのジュリさんも前回同様、緊張感を持って、こどもたちを迎えます。
※今回も各学年ずつ内容は若干異なる箇所もありますが、大筋は同じなのでレポートします。

先生と元気よく入ってきたこどもたちは、整列して挨拶をした後、おなじみの時間に今度はわくわくしている様子。身体ならすために北村さんたちとこどもたちは目を見合って、スッハー、スッハーから、ジャンプしたり、走ったり。定位置に戻ったと思ったら、ゾンビみたいなポーズをしたり、ぐるっと一回転したり、駆け足してみたり、どこか少し振り付けダンスっぽい。それでも、みんな何も気取らず見よう見真似で、北村さんの目をみて、自然に身体を動かします。

今度は、大きく手をあげて2ペアになり、お互いの目を見合って、合図と同時にじゃんけん、鏡、ひっぱり合いの3つからひとつを選びます。じゃんけんをするペアは、負けたら逃げておっかけっこして、捕まえられたら、またじゃんけんして、の繰り返し。鏡は、ひたすらにお互いの目をみながら、鏡になった気分でじっくり身体を動かします。ひっぱり合いは、手を組んでお互いの重心をひっぱり合います。3年生はここで、せーの!という声にピタっと止まる練習を何度も行いました。ピタっと止まるというのは、途中のままに身体を静止させること、じっと空気を止めるような。

他にも、ペアから他のペアとくっついて、4人組。行為はそのままに、4人でやってみます。その次は8人組。どんどん誰の目をみたらいいかわからなくなり、難しくなります。そこで、北村さんは、「手を離さずに、身体で工夫をしてみ」「もちろん、相手の目はみること」そういって、北村さんは、4人になったらこうなるし、8人になったらこうもできる。と身体のしなやかさをこどもたちに見せます。

次回の宿題は、このペアになったとき、4人、8人になったときの振り付けをかっこよくなるよう考えてくることです。こどもたちは、「えー」も言わずに、はい!とやる気満々でした。

実施が終わって、先生たちと次回に向けて打ち合わせ。前回はクラスごとに実施したにもかかわらず、学年ごとになってまとまりが見えてきた。前回、途中で外れた子も今回はやる気を取り戻していたと、少しずつ先生たちの中にも今回のダンスが見えてきた様子です。でも、こどもたちの中には初回終了後、これがダンス??とイメージしていたダンスと違っているように思ったのか疑問を抱えていたそうな。
『このワークショップは私にとって毎回が本番であり、完結はせずに次回へと続いていきます。それを積み重ねたドラマがあって、最後を迎えます。』 と北村さん。こどもたちに少しずつプロ(自立)の気持ちが生まれてきているように見えました。