今日は2回目の授業。前回はクラスごとに1時間でしたが、今日は学年で2時間の授業です。
中間休み。音楽が鳴る体育館に、子どもたちが入ってきます。
おんぶをする子。
端で座る子。
音楽を聴いてくるくる回る子。
人間椅子をする子・・・様々に体育館で過ごしています。
休み時間も終わりに近づくと、自然としげやんの前に集まる子どもたち。
やがて、体をふったり、膝をパタパタと動かしたりするしげやんのまねを始めます。
スーハー、スーハー。前の授業でやった呼吸を、思い出しているよう。
そして、規律。
ピッと気をつけ。
だらっと立つ。
も一度ピッ!
息を吐いたり、ハッと驚いたり、背伸びをしたり・・・と思うと、横に、後ろに動き始める。歩いて止まる。また、反対に歩いて、今度は・・・
走った!!!
走り始めるしげやんに、緊張していた表情に笑顔が浮かび、歓声も聞こえる。でも、集中は続きます。
円になって、あっちへぐるぐる。こっちへゴロゴロ。
やがて、正座。呼吸。
手をつきかけて、やめる。息を吸って、また手をついて・・・
「よろしくおねがいします!!」
や~っと、しげやんの声がしました。
「ちょっとにぶかったな~」としげやん。
「見て、わかってから動こうとするとこうなる・・・つまらんやろ?“打てば響く”っていうの、すごい大事」
前回と同じメッセージが、動きをもって語られます。
開始から約10分。
「今日、早速皆さんにふりつけをしていきます」と、宣言するしげやん。そして、アシスタントの下村さんと音楽に合わせて、踊り始めます。
その後、「何をしてたかわかった人?」「何に見えた?」と問うと・・・子どもたちからは、カエル、ウサギ、バネ、ノミ、チーター、カンガルー・・・との答え。
「どれも正解。そのどれでもないことをやりたい。」と、しげやん。
しげやん「この曲どんな曲やった?」
こどもたち「ヴァイオリンとピアノ」
しげやん「私たちは、何してた?」「何で踊ってた?」
こどもたち「足、手、腰、おしり・・・」
しげやん「ヴァイオリンとピアノの曲を使って、各々、おしりで、えんそうしてました。
からだを使って大演奏会をしたい。」
「みんな、リズムとかメロディーってしってる?」
「リズムってどんなん?」
こどもたちは、三拍子をとる。
すかさず、「これ、三拍子ちゃうし」と、ただ手を叩く様子を見せるしげやん。
腰と膝を動かしながら、手をたたいてみせる。
「メロディーってどんなん?」
「メロディー知ってる人?」
手を合わせて、波打つようなメロディーの動きが出てきます。
「二人でリズムとメロディー組み合わせてやってみて。」
これが、今日のきっかけとなるお題です。
さて、ここからが、今日のドラマの始まりでした。
ある二人組が見本になりました。リズムとメロディーになって踊る二人をみんなで見ます。「やってること、わかるやろ?もっと、やってることわかるように」としげやんからのコメント。
練習していると、また新たな見本をしげやんが指名します。「さらに進化してる。人があってくれるのを待つんじゃなくて、いつもいっしょ。」
練習再開!そして、また新たな見本のペアが指名されます。「これ、さらにかっこいい。さらに進化してる。それぞれの見せ場がある。」
仲間の活躍と、しげやんの的確なコメントに、だんだんこどもたちも、どんなふうに動いていけばいいか、わかってきた様子。どんどん動きがアクティブになっていきます。
また、今度は、リズムとメロディーの関係の曖昧さを指摘し、「自分にわかったらいいんじゃなくて、相手の人にわからなあかん。自分にたたいてる。わかるように。」というアドバイスが語られます。
最初はペアでやっていたものが、自然発生的に数人のグループになっていくところも。
そんな6人組の男の子グループがみんなの前で踊ります。
「踊れる男子、多いな」と、しげやん。
女の子のペアも見本になるけれど、ちょっと恥ずかしそう。
そんなとき、しげやんは、まず、相手に、そして、周りの見る人に伝えることが大切だと語ります。
友達のユニークな動きが、しげやんによって紹介され、体育館は、どんどん創作の熱気を帯びていきます。
しげやんに「見て~」と言われて、大喜びする男子たち。
どんどん、動きが発明されていきます。
そうしている間に休み時間。
なんと、この動きの発明への情熱は休み時間も続き、熱心に活動を続けます。もう、アイデアを出したり、動きを創ったりするのが、楽しくてしょうがないという感じ。
この創作に向けて突き進むエネルギーに、スタッフもびっくりでした。
***4時間目***
「オーケストラの生演奏聴いたことある?」としげやん。
最初に、指揮が手をあげたら、すっと最初はポーズをすることや、
リズムをやる、メロディーをやるという構えをするとの指示。
「指揮者が手をあげたら、最初にやる人の所に走って。すぐ始めれるようにしてください。仲間で開発したやつ、練習してみて。さっきまで、いろいろ発明してた仲間のところにいってください。」
一回やってみて、しげやんから「ここまでできたら、できたも同然」との嬉しいコメント。
その後、一組ずつ、考えた動きの発表です。みんなが見守る中、順番に発表していきます。やる気満々のグループもあれば、ちょっと心細そうなところも。
男の子たち数人のグループ。一つの動きを見せて、「終わり?」としげやんが聞くと、「まだある。」次の動きを見せて、「終わり?」と聞くと、「まだある。」たくさん開発をしていたのでした。そんな彼らに、しげやんからは、「1つの歌になるように開発して。つないでる間も音楽がとまらないように。曲をちょっと歌って、まだあんで、っていわないでしょう?」
例え話も盛り込みながら、グループごとにしげやんならではのコメントがつけられます。
「いっせ~の~で」と言って始めているグループには、「歌う前に、いっせいの~でって言う人いいひん。」と、始め方の工夫をするようにコメント。
二人の間で足と腰を持って揺られてる子には、「腰、いたくない?」と確認。
見せるまでにもたもたしていると、「おそい、おそいとこ時間ないし。」との言葉。
「それぞれがやって、私たたいてますから。これでは駄目。これで、1つの音楽になってなあかん。」
「最後の方で、1つになった。だんだんじゃなくて。1つになるっておもしろいな。」
「リズムとメロディー。一人でわかれてるんじゃなくて、一人でどちらもやる。」
あるグループは、お互いに帽子をなげる動きが。
「アイデアめちゃめちゃおもしろい。ものをとばすことで、メロディー。」と、ユニークな点を評価します。
「伝えきってない。みんなに伝えるねんけど、まず、相手に。やって本人同士わからんことを、見てる人もわからん。」
「ブリッジしてる人の努力に比べて、まわりの人の動き楽しすぎ。損得あったらあかん。」
「リズムとメロディーが途中で変わってました。」
たくさんのグループそれぞれに、しげやん目線の鋭いコメントが寄せられます。子どもたちは、真剣に受け止めている様子。
全部のグループの発表が終わり、今言われたことをふまえて、グループごとに練習する時間をとることになりました。
12:15
いよいよ今度は全グループで一斉に曲に合わせて踊ります。
「自分たちの組、どこにいるかしっかり見せて。
今日、一曲ためしてみよう。どんなかんじになるか。」と、話すしげやん。
その時、体を斜めにして立っている子がいたのでしょう。しげやんは、こう語ります。
「こういうふうに立つのをやめてくれる?(実際にやってみせる)
おまえ、今から何しゃべんねん、というふうに見える。
人の話を聞く身体。身体全部が相手の方に向いてるねん。」
前回と同様、身体が、意識せずとも表現してしまっていることを伝え、身体への意識を促します。身体は、よくも悪くも、多くを語っているのですね。
もちろん、いきなり踊りだすこともできませんでした。踊り出す以前に、大切なこと。
移動が遅ければ、「始まんのおそいの失格。一秒でもおそかったら、だれもみてくれへん。
ハイ、もどってもどって。」との言葉。
そして、曲に合わせて踊りました!!
その踊りは、周りのスタッフも、先生も、アシスタントも、そしてしげやんも、びっくりするくらい、素晴らしい踊りでした。
あらかじめ決まっていた動きではなく、2時間の授業の中で、友達と関わりながら生まれた動き。生まれたばかりのダンスは、どこか原始的で、うねるようなエネルギーと、踊りの神様が舞い降りたような熱狂を感じました。
一斉に繰り広げられる、『祝祭』のような踊り。あまりのおもしろさに、目が離せず、夢中で見つめてしまう時間でした。
そして、音楽が終わり…
「むちゃくちゃよかった!!」と、笑顔で話すしげやん。
「今日、たった二時間の授業でどこまであるんや。これ、めちゃくちゃかっこいいから。」
そして「それぞれのグループが、入れかわるのをもっとたくさん作ること。静かなシーンも作ってみること。だんだん。どっからみても、わかるように工夫すること。」という宿題が出されました。
呼吸を合わせて、まねをして、最後は、うわ~~~っと声を出して、のびて、手をついて、礼をして…授業はおしまい。
いよいよ次は、最終回です。
その後の先生との振り返り。
印象的だったのは、「ワークショップらしいワークショップになった」という北村さんの言葉です。
北村さんいわく、小学校のワークショップで、今日のようにここまでできるのは、めずらしいパターンだそうです。
北村さん「ダンスのワークショップの場合だと、やりたい人がくるが、小学校の場合は、ダンスへのモチベーションがすごくまだらである。いろんな気分の人がいる中で、今日のようなダンスができるのは、すごいと。来週できあがる作品が見えた。」
実 際、北村さんは、今日の授業で、振り付けをしようと考えておられ、段取りもされていましたが、実際は、段取りを全然しない方向にいったそうです。前回、 「打てば響く」というメッセージをこめたワークショップを実施し、それがどれだけ残っているかを試しながら進めていくということだったのですが、子どもた ちの反応がよく、その反応を見て、今日のような流れになったということでした。
北村さん:
「今日は、こういうふうに向かっていくんだ、自分たちでゴールを見つけて、そこへ道をつくった。」
「6年生。思春期。いろんな人たちがいてる中であそこまで全員でやる。あまりみたことがない。」
また、「1組ずつ見せる」というパートについては、
・できてるかどうかでなくて、人にみせる。ということを知ってほしかった。できてるけど、うまくできひん。そこへ向かうのに時間がいる。勇気が足りない。それがわかる。
・1組、見せないグループがあったが、えらいのは、「未完成です」といった。完成品を見せたいというのがあった。そのあと、ちゃんとできてる。
という意図や感想が話されました。
他にも、
・休み時間が始まったとき、「よっしゃ~」という声が聞かれ、それは、休み時間で遊べるというのではなくて、もっと踊りを考えられるという意味の「よっしゃ~」という声・雰囲気であったということ。
・指名をして、「みんなの前でやって」というと、「イエ~イ」という反応が返ってきたのは、初めてだ
と北村さん。北村さんにとっても、今日のワークショップでの子どもたちの姿は、新鮮なものであったようです。
先生たちからは、
・動くの好きな子。ばーっと動いてくれた。それにのまれてうごけた。
・楽しかったと思う。
・グループ化されてた方が動きやすい。
というコメントや、意外な子どもたちの活躍を喜ぶ声が聞かれました。
ま た、「一人ぼっちを作らないように」などの、声かけがなかったにもかかわらず、一人になってる子、いなかった。こういうことをやってたら、(あの子が一人 なんじゃないかな)と思える。一人になるかもしれない子を、気になった子がいて、すごいなと思った。」という話もありました。
他にも、振り返りの中で、
・形がおもしろい。アフリカの祝祭のようだ。
・大人じゃ考えつかないような子どもの動き。
・やりたくて、やりたくて仕方ないがない様子が伝わってくる
ダンサー:今から練習→一人ひとりだと思いつく子もいるけど、何も思いつかない。見た目にはすごくなくても、自分の思いついたのは、これだけだけど、みんなでやると。
ま た、今日の授業では、自然発生的な部分が多く見られました。動きについてもそうですが、実は、グループについてもそれがいえます。「二人組からグループに なって」という指示をしていないけれど、自然にグループになっていきました。やれっていうのと、自然になるのは意識として雲泥の差があり、人に何かしても らいたいとき、促して行く、待つということが必要だという話が出ました。
最後に音楽について。
北村さんいわく、三拍子というのは、「トランスしていく拍子。」心臓の拍子でもあり、人の潜在的なものに触れるリズムだそうです。
「なにやら、すごいものを見てしまった・・・」そう皆で確信し、次回に向けて期待を高めつつ、ふりかえりは終了。
興奮を胸に学校をあとにします。次回はいよいよ最終回。5年生に向けての発表です。