台風が過ぎ去って、晴天。準備を備えて北村さんが体育館で準備体操していると、先生たちがやってきてこれまでのこどもたちの様子を事前に報告。どこまでできて、どこまでできてないか。この本番直前の確認が、これから実施する内容に効いてきます。今日は3年生と4年生が合同で90分かけて練習します。
授業のチャイムが鳴る前に、こどもたちがまだかまだかとドアをどんどん叩く。ドアを開けてもいいですよ。との合図で、こどもたちは入ってきていつもの整列になる。どこかそわそわしてる空気。先生のいつものご挨拶をしたあと、今日はしげやんとアシスタントのジュリさん、タナカさんの3人でご挨拶をする。ジュリさんが一瞬挨拶の声が小さくて、「声がちいさい!」としげやんに注意の声が響く。ジュリさんも改めて大きな声で挨拶。
挨拶をした後すぐに無言の対話が始まる。こどもたちも待ってましたとばかりにそれに応えます。早速身体ならしに、前回行ったゾンビ、かぶき、くるりと回って、と以前先生が必死に覚え、練習してきた振り付けをみんなで繰り返し、身体を動かします。小さく整列してたら前後左右が邪魔になっているようで、「邪魔にならないような場所に動きなさい。」とあくまでも「このラインまで広がりなさい。」と行動を言葉にしません。
「sing!sing!sing!」に合わせて、繰り返し全体のダンスを踊った後、マイクを持って振り付けに意味を伝えます。「シャツを脱いで(脱ぐように)、パンツを脱いで(脱ぐように)、肩に蚊が止まったから、くるっと回って追い払う…」言葉で意味をつけることで、より振り付けに気持ちがはいっていきます。
次に、手招きをして2学年のこどもたちが北村さんを囲むように集まります。声はマイクを通して小さくしゃべります。「みんなの顔がみえるように」と合図をして、こどもたちは体育館にだまって大きな円になって座ります。 「顔見えてるー?」と北村さんも声を出して緊張を盛り上げます。この円の中で、各クラスそれぞれで練習して来た事を発表することになりました。座ってる人はしっかり踊ってる人のことを見ること。しゃべる必要も打ち合わせも必要もないです。「しっかり踊りを見ることで、緊張して踊る人も踊りがきれいになるから」こどもたちは今まで練習して来たことを実践するのに、恥ずかしいのかもたもたしています。3年生から発表していき、各クラスごとにどう見えたかこどもたちが感想を言い合います。「円の端っこの方で固まってた」「ちゃんと相手の目をみてない」といろいろクレームばかり。「おかしいことに気づいた人はその気づいたことを治すように!」と北村さんが言うと、4年生たちは自分たちが言った手前しっかりせねばと、緊張がさらに増します。
その緊張感は、見学者の私からも身体で感じるほどで、遠くの方で他のクラスの子が「がんばれ!」と応援している程でした。また、踊った後、拍手を送る子もいました。
3年生から始まり、4年生で終わり、一安心したところで、「もう一回!3年生、さっきよりもがんばってみよう!」と北村さんの声があがる。こどもたちも「とことんやるぜ!」な勢い。中には体力がくたばって端っこで休憩する子もちらほらしています。
2周目のダンスが終えてまだ固まってみえることに激が走ります。「できる、できへんかは関係ない、やるかやらんかが大事!」こどもたちも「はい!」と勢いのある返事。
ここで前半終了で、10分間の休憩時間に。チャイムがなるまで自由です。こどもたちは一気に緊張感から開放され、声を出す子もいれば走り回る子も、のんびり過ごす子もいます。それでも、さっきのダンスになっとくいかない子らは、中央でグループになって練習しています。
あっというまに休憩が終わって 、緊張はキープされたまま次の振り付けへ。全体の踊りの確認をした後、今度は全員で一列になるように並びます。アイドルグループEXILEのダンスみたいに顔から下をぐるぐる回す踊りをします。一列になることに時間がかかってしまい、北村さんも「そんなんじゃ間に合わないよ!」と声があがります。こどもたちも、頭ではわかってるけど、なかなか思い通りに身体や全体で瞬時に動けずヤキモキしてるようす。
それでも、大きな一列のEXILEダンスは、大きな龍みたいにざわざわと波打つように動いてかっこ良くなり、「めっちゃかっこいいやん!」と褒めます。次は、各クラスごとに分かれて、さっきの全体の踊りのタイミングをずらすことで、4つのブロックに見せます。ここは身体も踊りを覚えていて、こどもたちはなんなくクリア。逆に先生が「覚えてないやん!」とこどもたちに突っ込まれてました。(笑)
さて次はペアになって手を組みます。全体で動くよりも、ペアの動きが断然やりやすそうでいきいきしてます。ある音楽のタイミングで「ピタっと止まる!」静止の時間をつくります。ここは遠くで車の音しか聞こえないぐらいの、静の時間。そしてラストは全員で最後の盛り上がり!全体の踊りをもう一回踊って、エンディングへ向かいます。
体力も集中もふわふわしてきたところで「後で練習したらいいと思ってるけど、今できないと、やったことない動きは後で練習してもできないよ」と最後の追い上げ。
ここまでで、もうこどもたちも北村さんもテンションはあがりきってて、見ている側も気持ちがいっぱいになってきます。それでも、最後までがんばって踊ったこどもたちは本当にナイスファイトでした。
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実施終了後、給食を終えて来られた先生たちと次回に向けての打ち合わせ。やはり全体の移動にメリハリが足りないので、特に練習してもらうように伝え、他にも細かな動きを確認しながら、次回で最終回になります。今回見学していて、一見「伝わっているのかなあ」「ちゃんと踊ってるのかなあ」と思わせる姿に見えるのですが、でも、よくよく見ていると顔が真剣だったり、工夫していたりして、こどもたちが自発的に踊ろうとしていることが実感できました。こどもたち一人一人の中でいろんな答えや工夫のダンスが形になりつつあるような。小さな芽を私たちは少しずつ育っていることを信じて見つめているような気がします。本番まであと6日間。